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2006年  第3回定例議会  討論  (9月26日)
要旨
国民健康保険改正の条例設定の反対
◎【9番陣内泰子議員】 無所属の陣内泰子です。
 それでは、第80号議案、八王子市国民健康保険条例の一部を改正する条例設定に対する反対の立場から討論を行います。
 この条例設定は、健康保険法等の一部改正に伴うものです。健康保険法の改正は、このまま医療費をほうっておけば日本の医療費はどんどんと膨れ上がる。医療費の負担を少しでも軽くするために、特に高齢者の医療費を抑制しなければならないという認識を前提にしています。昨年12月に閣議決定された医療制度改革大綱は、国民皆保険を堅持し、将来にわたり医療保険制度を持続可能なものとしていくため、医療費適正化の総合的な推進、新たな高齢者医療制度の創設、保険者の再編、統合等、所要の措置を講じるとしています。
 その医療費適正化の総合的な推進のために講じられたものの1つが、保険給付の内容、範囲の見直しとして、今回の条例改正案にある現役並み所得のある高齢者の2割から3割への窓口負担の見直しであり、療養病床の高齢者の食費、居住費の見直し、また2008年からの実施予定の70歳から74歳の高齢者の患者負担の1割から2割への見直し等です。こういった保険法等の改正そのものの問題点を指摘したいと思います。
 まず日本の医療費は、このままにしておくと国民皆保険が維持できなくなるほど逼迫している状況にあるのでしょうか。厚生労働省の示す医療費予測は常に過大で、95年、97年、2000年、そして2005年と常に下方修正してきております。医療費削減の必要性の根拠があいまいです。しかも、2005年に出された厚生労働省の2025年の総医療費推計にしても、今の現行制度を維持すれば56兆円とされていますが、これは国民総生産GDPにおいて7.7%の割合、国力に比べて決して高いと言えるものではありません。また、同じ厚生労働省が発表したOECDの2006年資料によれば、日本の総医療費は加盟30ヵ国中21位と低いレベルであると厚生労働省自身も認めているところです。このように医療費抑制の根拠が非常に不十分です。
 次に、国民医療費の財源です。国などの公費負担、事業主負担と加入者負担による保険料、そして、患者負担、これで構成されています。そして、この20年来、医療費の占める国庫支出の負担割合は減ってきているわけです。1985年には、全体の26.6%であったのが、2003年度には25.6%へと削減され、また、その分患者負担が増大してきています。事業費負担、加入者負担は減少の一途です。そして、国民医療費をどうするかといった議論から、いつの間にか医療給付の抑制の問題へとすり変わり、患者不在の議論へとなってしまったわけです。今回の高齢者の患者負担増はこういった流れにあると言えます。
 国の医療費をはじめとした社会保障費削減の施策に対して、日本医師会総合政策研究機構の研究員、○○○○○氏は、社会保障費の削減で国家財政は健全化しない。この国では、国民の命を守る平時の国家安全保障よりも有事の安全保障が優先され、イラク派兵が強行され、アメリカへの思いやり予算が支出されていった。つまり、国民の命を削って国民の命以外のもののために国家予算が使われていると警鐘を鳴らしています。
 医療制度改革による負担増は、高齢者の窓口負担増だけでなく、高額療養費の患者負担上限の引き上げ、70歳以上の療養病床入院患者の食費、居住費の全額自己負担、そして、人工透析患者の負担上限額の引き上げをも含んでいることを考えると、2割から3割への窓口負担増は、現役並み所得のある人なのだから多少の負担はしようがないでは済まない問題と言えます。
 確かに今回の現役並み所得のある人の負担増というところだけを見れば、年収ベースで夫婦2人世帯で520万円以上、単身で380 万円以上という対象となる人は、70歳以上の高齢者の約17%と言われています。しかしながら、全生涯で使う医療費の49%を70歳以上で使うという厚生労働省推計から考えても、高齢者の医療費負担、介護負担は大きく家計に影響を及ぼし、また、加齢によるさまざまな問題を抱える高齢者の生活を考えるなら、医療費の負担増は極力避けなければならない施策です。
 また、70歳未満のだれもが窓口負担3割を負担している、不公平だという意見も聞かれます。しかし、これは木を見て森を見ない視点であると言えます。医療費の負担増を自己負担の名のもと、患者同士に負わせて、あっちが安い、こっちが高いと足の引っ張り合いをさせて、本質的な問題解決を回避させるだけのものです。日本の医療制度のある意味貧困さを露呈させているにすぎません。
 以上、指摘したように、健康保険法等の一部改正そのものに大きな問題があることから、今回の改正に伴う条例設定に反対いたします。

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