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2008年_第4回定例会(第6日目) 補正予算反対討論 (2008.12.15)
【9番陣内泰子議員】 市民自治の会の陣内泰子です。
 それでは、第105号議案、2008年度一般会計補正予算について、反対の立場から討論を行います。
 都市環境委員会所管分の八王子駅南口地区市街地再開発事業についてです。今回の補正は、再開発事業に絡んで、2009年、2010年に整備される南北自由通路の延伸工事について、3年間の債務負担行為を設定するというものです。補正額は1億700万円ですが、総事業費はおおむね5億4,000万円と説明の中で示されています。
 今回の補正予算が示される前、JR東日本は、この南口再開発事業に合わせて、駅ビルの建設発表を行いました。場所は、改札を出て南方面に直進、現在、エスカレーターがあるあたりの左手に地上7階、地下2階、延べ床面積1万7,000平方メートルのビルで、大型量販店、保育所、飲食、物販などのテナントが入る予定とされています。シネマコンプレックスは入らないということでなっています。立面図を見るならば、自由通路の上にも建物がある。通路をビルの中に取り込んだ一体型のものとなっています。そこで、だれもが疑問に思うのは、JR東日本が通路とビルを一体として建設するのに、なぜその費用を市が負担しなければならないのかということです。
 代表質疑、そして、委員会質疑の中で明らかになったのは、平成4年、前 ○○○市長時代に取り交わされた覚書があり、その中で、駅前広場と既存の自由通路との接続は市の負担で行い、整備完了後はJRの財産とするといったものがありました。この覚書のよって立つ論理は、駅の中は交通事業者が整備、駅の外は都市側、つまり、行政などの交通事業者以外が整備するといった、今から考えてみれば大変時代錯誤的な考えによるものです。今回の南北自由通路延伸整備に関するJR東日本との基本協定書では、この16年も前の覚書を踏襲するとされ、費用は全額市が負担。事業設計及び施工は、JR東日本がするものとなっているのです。おかしなことです。
 この16年前の計画と現在の計画は大きく変わっています。また、この覚書を取り交わした時点では、JRが駅ビルを建設するという具体的な計画はありませんでした。ということを考えるならば、全く違う計画における覚書であれば、それを採用する根拠はなく、新たな計画に基づき、負担割合をどうするかという交渉でなければなりません。さらに言うならば、今回のJRの計画は、通路がビルの中に取り込まれていて、設計、施工をJRが行うものでありますから、その建設費用もJRが負担して当然と言えます。行政、企業、市民との協働を進める本市においてはなおのこと、JRに社会貢献、交通事業者としてのまちづくり貢献を強く働きかけるべきです。

 次に、こういった覚書は変更できないのかということです。状況が変わったり、計画が変更になったりすれば、当然覚書の前提が変わるのですから、変更できるはずです。事実、新市民会館の保留床取得に関する2006年12月4日の覚書は、2008年2月8日に変更されています。つまり、工事の発注前までに保留床の譲渡計画を締結するとなっていたにもかかわらず、譲渡契約がないまま、2008年1月工事着工。そして、2月に事後整合性をつけるために、2009年度中に譲渡契約に関する議会承認後、速やかに保留床の譲渡契約を締結するという内容に変更されたのです。工事の着工との関係については削除されています。
 こういった覚書の変更並びに変更前の覚書を無視した工事着工は大変問題があり、ことしの予算等審査特別委員会においても指摘したところです。今はその内容を問題にするときではないので、詳しくは言及いたしませんが、覚書はこのように永遠不変のものではなく、それがいいか悪いかは別として、行政みずからが変更させてきたという実績があるということ、そのことを指摘しておきます。市にとって、今回のこのJR東日本との基本協定、明らかに不利で、理にかなわない覚書をなぜ変更せず、踏襲してきたのか、そういった説明は委員会の中でもありませんでした。

 次に、金額についてです。南口再開発の総事業費が公のところで示されたのは2006年3月の議会においてでした。そして、2006年8月、組合結成、事業計画が本決まりとなり、資金計画の概要も明らかになりました。この時点での再開発総事業費は342億円。市が市民会館や地域事務所の取得、駅前広場整備などで負担する金額は約112億円余りとなっていました。しかし、わずか10ヵ月後の2007年6月、計画変更がなされ、総事業費は約358億円となり、それに合わせて市が補助金や取得費、駅前広場整備や道路整備などで負担する金額が市債も含めて約140億円となったのです。詳しい事業費の内訳は、2008年2月28日の資料で示されています。そして、この時点での南北自由通路関連費用は3億1,900万円と明示されています。もちろんJRの駅ビル構想はまだこのときには出てきておりません。単独で市が延伸した場合の見積もりとなっています。しかし、今回示された延伸に必要な総事業費は5億4,000万円です。この差はどうなっているのでしょうか。この点についても説明がありませんでした。
 再開発事業費に関しては、覚書を無視して本年1月に工事着工。そして、わずか7ヵ月でさらに計画変更、事業費の増額が行われています。総額387億円、29億円余りの増で、市の負担分も5億6,000万円余りの増になっています。この中には南北自由通路の費用増は含まれていません。費用の際限ない増額に対して、今議会の一般質問でも山口議員が取り上げ、南口再開発ということで、どんどん資金が投入され、歯どめがないといった趣旨の発言がありました。まさにそのとおりと言えます。

 以上、南北自由通路延伸事業費に対する負担の根拠が定かでない、また、たとえ全額市が負担するとしても、その金額は今まで示されている金額との間に乖離があるということを指摘して、反対討論といたします。

 最後に、委員会などの質疑を聞いていると、必要なものは必要なのだから、最小限に抑える努力をしつつも、いいものをつくってほしいといった発言が目立っております。これでは議会としてのチェック機能をみずから放棄するようなものであり、当初計画どおりすりあわせていくのか、どうしても増額変更せざるを得ないときには他に削るところはないのか、節約できるところはないのか、このような事業費を抑えるインセンティブが働きにくくなっています。私は、これらの原因は、十分な計画立案、また、再開発を実施するに当たっての明確なまちづくり構想がない中での事業スタートであったことが南口再開発事業をめぐるさまざまな混乱と事業実施の不手際となっていると考えます。

 今後、担当の方々の個人的な努力では対処できないような事態も起こりかねないと心配しているところです。その第一が、まちづくり事業としての成立への見通しのなさ、活性化への寄与への展望のなさと言えます。いまだテナントが1階のクリニックと銀行しか決まっていないことも心配です。また、再開発ビルに連なる周辺地域の面的整備のグランドデザインが示されていないこともあります。この未曾有の金融危機、雇用負担が表面化し、現実化し、税収への影響も厳しいものとなってきています。市民合意がない中で、計画不十分なままでの着工、変更を重ね、そのたびごとに市の負担がふえ、かつ、それをチェックする仕組みがなかなか議会の中にないというこの南口再開発事業が、八王子の教育費用や子育て、セーフティーネットの強化などの費用を食ってしまう。そのような心配がより現実のものとなってきていると、今改めて思っているところです。  話は変わりますが、アイルランドのダブリンで、ロックバンドU2の事務所が入ることになっているアイルランド最大の高さ120メートルのU2タワーの建設が、着工を目前にして、この金融危機の中、事業見通しが立たないと、一時建設中止となったというニュースがついこの間報じられました。私は、この南口再開発事業のこれからをも暗示するようなものと、この記事を読みました。その中で希望を見出すとするならば、南口をどういったまちづくりにするのか、再開発ビルにとらわれないで、広く市民の意見を聞きながら、グランドデザインを描いていくことにあると思っております。
 以上をもちまして反対討論といたします。    <ページトップへ>