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2009年_第2回定例会(第2日目)一般質問(特別支援教育編)
特別支援教育の現状と課題について

◎陣内: 特別支援教育の現状と課題です。(2009年第2回定例議会一般質問 陣内
 特別支援教育が始まって3年目になります。八王子市の場合は、それに先立ち、3年間のモデル事業実施期間もあり、かなり浸透してきているのかとも思うところです。特別支援教育が始まって特に著しく変わったこととして、固定学級、通級学級に通う児童、生徒が多くなり、5年間で小学校の固定学級の在籍児童数は約1.8倍、通級学級においても1.7倍へとふえています。また、中学校においても同様の傾向が見られています。
 増加の背景として、保護者の間に特別支援教育の理解が深まったからとも言われているのですが、裏を返せば、普通学級での障害理解に満足できていない保護者が多いということでもあります。
 市は、各学校に特別支援コーディネーターを配置し、校内委員会をつくったり、また、特別支援教室を設置するようにしてきたわけですが、そのことが各学校それぞれにおいてどういう意味を持っているのか、定かではありません。特別支援教育が学校全体の教育目標の中でどう位置づけられているのかもはっきりしません。
 2004年、石川教育長は、私の質問に答えて、心身障害教育から特別支援教育への転換の趣旨として、ノーマライゼーションの理念を掲げられております。「従前、ともすれば、心身障害学級のみが対応してきた障害のある児童、生徒への取り組みを、学校全体で児童、生徒を含めたすべての人たちが支援するものにしていかなければならないと考えております。この取り組みにより、教員が子どもたちひとりひとりの理解に基づく教育の姿勢を持つことにつながり、個に応じた教育の実現に近づくと考えております。」こう発言されて、既に5年がたっているという状況です。
 また、2007年9月、日本政府が署名した障害者権利条約の24条では、あらゆる段階におけるインクルーシブな教育を確保するとし、障害のある子もない子も一緒に学べるようにすることを求めています。今までの分離教育を前提とした特殊教育からの大きな転換が図られなければならないのです。
 そこで、現在の特別支援教育になることによって何が変わり、何が変わっていないのかを点検し、インクルーシブな教育のために必要なことを考えたいと思い、質問します。
 お尋ねいたしますが、まず固定学級並びに普通学級、通級指導学級の目的というか、位置づけはどのようなものになっておりますでしょうか。
 次に、特別支援教育の理念で示されている共生社会の基礎としての側面についてです。文部科学省は2007年4月1日付で出した特別支援教育の推進についてという初等中等教育局長通知によれば、特別支援教育は、障害のある幼児、児童、生徒への教育にとどまらず、障害の有無やその他の個々の違いを認識しつつ、さまざまな人々が生き生きと活躍できる共生社会の形成の基礎となるものであり、我が国の現在及び将来の社会にとって重要な意味を持っていると書かれているのですが、こういった共生社会の基盤づくりを教育現場ではどのように施行し、具現化させているのでしょうか。また、実際にどのような進展を見せているのか、お答えいただきたいと思います。)

◎ 【由井良昌教育指導担当参事】 特別支援教育に関して御質問をいただきました。
 1つ目は、特別支援学級の位置づけについてでございますが、知的障害固定学級では、知的障害のある児童生徒が障害の特性や発達段階などに応じた指導を受けます。情緒障害等の通級指導学級では、知的障害がなく、情緒障害や学習障害などにより、人とのかかわりなどに困難のある児童、生徒が、具体的なコミュニケーションの方法などについての指導を受けます。それぞれ学習上及び生活上の困難を改善、克服する、そのための指導や支援を行っているところでございます。
 次に、教育における共生社会の具現化に関する考え方やその実施の状況ということでございますが、特別支援教育の理念に基づきまして、特別支援学級設置校では、交流及び共同学習の重要性を理解して、児童生徒の実態を考慮しながら教育課程に位置づけております。具体的には、通常の学級と特別支援学級の児童、生徒が学校行事や授業、昼食などの場面を通して相互理解を深めるなど、各学校で工夫して取り組んでいるところでございます。)

◎陣内:次に、特別支援についてです。
 固定学級については、まだ障害の困難を克服するというような御判断があります。そして、この固定学級については、文部科学省において当初廃止するという方向性もあったのですが、保護者や教育現場からの強い反発があり、存続になっているという経過があります。そして、今回の説明でもわかるように、特別支援学級の位置づけは、残念ながら従前の特殊学級と何ら変わっていないと言えるものです。そして、その上で共生を目指す試みとして、教育課程に位置づけて交流や共同学習を行っている、そう理解いたします。しかし、残念なことに、ともに学ぶインクルーシブな教育に至っていないように見受けられるわけです。ある学校の教育課程を見ると、特別支援教育に言及していないものもあったり、また、心身に障害のある子どもとの交流を外国人との交流と同義に考え、連帯感を持つなどとしているところもありました。固定学級に通う子どもたちは、その学校の構成員として認識されていないのでしょうか。
 ある保護者の方からの御意見を紹介します。5年生のときに実施される連合音楽祭の折に固定学級に在籍している5年生が、舞台ではなく、客席での見学であった。たとえ上手にできなくても、鈴を持つとか、何らかの工夫で一緒の舞台に立てるのではないか。そのような御意見でした。つまり、すこやか学級とか、すみれ学級とか、そういった学級の子どもではなく、同じ5年生として見てもらいたい、そのような御意見です。
 また、特別支援学級や通級指導学級に在籍していると、自分でできるようになることが自立と言われるけれども、果たしてそうでしょうかと、疑問を投げかけられています。教育者は自分のことを自分でやれるようになり、他人に迷惑をかけないようにする。それを身につけることが第一であると考えているようですが、さまざまなハンディゆえにどうしてもできない、習得できない子どもだっているわけで、その際に大切なのは、こういった人たちをどう支え、社会や周りがどう一緒に生きていく力や考え方を持てるか。そういうことではないでしょうかとも話されています。まさにそのとおりで、特別支援学級在籍ということで学校の中での疎外感を抱く保護者の方の痛烈な批判でもあります。同じ思いの保護者の方は多くいらっしゃると思います。
 そこで、各学校が作成する交流計画を見させていただきました。これは固定学級を持つ学校がどういった共同学習を行うのかといった計画で市教委に提出しているものですが、学校によってまさにまちまちなんですね。これでは困ります。教育委員会として、交流や共同学習の進め方について、指導なりモデルを示し、先進的な取り組みなどの共有化を図っていくことも必要と思うのですが、いかがお考えでしょうか。
 文京区のある小学校の取り組みですが、固定学級に在籍する児童は、すべて通常学級に所属し、朝の会や帰りの会を一緒に過ごす。プール指導なども一緒にする。通信簿は固定学級、通常学級の先生、お二人で作成する。そのような中で、必要がある場合には特別なサポートを実施していく。そのような学校運営がなされていると聞いています。
 また、八王子にもすばらしい先進的な取り組みがあります。研究教育校の打越中や第二中の実践です。先日、二中にお邪魔して見学と校長先生のお話を伺ってまいりました。二中では、子どもに病名をつけることよりも、子どもたちが何に困っているのか、そこに着目し、不登校や引きこもりという学校の課題解決に取り組むわけです。それがオアシスという教室になるのですが、生徒だれにも開かれており、昼休みなどは常時40人ぐらいの子どもたちが遊びに来ているということです。教室の設置場所も、そのような子どもたちがたくさん来れるような場所にと配慮されているわけです。
 また、特別支援学級として通級指導学級もあり、二中の在校生が通っています。理科や音楽の特別教室に通うように、一斉授業になじめない場合など、この部屋で個別指導を受けているということです。ことしからの開設で普通学級との橋渡し的役割を担っていると思われます。
 もう一つの課題が学習支援です。個別学習指導と自学自習の場を同じく学校内につくり、運営しています。ここでも児童の学力不振、つまり、障害の有無とか、障害の病名設定とかいうことではなく、子どもの現状、つまり、学力不振という子どもの課題、困り感に注目しての対策が講じられています。しかも、どの子がどんな問題を抱えているのかを全校での教育相談委員会を毎週管理職、また、普通学級、こういった支援学級、サポート学級、またボランティアも含め、情報の共有を図っているということです。
 二中の特別支援教育を支えている理念は、子どもを見捨てないということです。そして、これらの活動を通して、学校は特別支援教育を充実させることは、学校づくりの基本であり、教育活動として当然のように行わなければならないことに気づくことになった、このように述べています。簡単な紹介ではありますが、文京区のこの試みや八王子の実践など、学校全体、また、組織として、特別支援教育に取り組んでいる例であり、まさにインクルージョン教育の前提であると考えます。
 そこでお尋ねいたしますが、交流や共同学習にとどまらないインクルーシブな教育を進めるための環境整備が必要と思うのですが、この点についてのお考えをお聞かせください。
 次に、場所の問題です。ある新設校に伺ったとき、特別支援学級が大変狭い廊下を通ったその先にある教室だったり、人気のない学校の一番外れであったり、また、職員室も通常の職員室とかけ離れて設置されたりしていることを多く見受けます。これでは、日常学校生活レベルでの教師同士の交流や子ども同士の交流は図られにくいと思うわけです。今ある特別支援教育や職員室の設置について、インクルージョン、並びに共生といった視点から点検し、見直しを検討していただきたいと思うのですが、お考えをお聞かせください。)

◎【由井良昌教育指導担当参事】 特別支援教育に関しまして、市として交流及び共同学習の進め方などについて指導したり、モデルを示したりする必要があるのではないかという御質問がございました。これは極めて重要なことだというふうに考えておりますので、特別支援学級担当教員研修会などで交流や共同学習についての情報交換や先進事例の紹介などを進めてまいります。
 次に、交流を進めるための環境整備ということでございます。市内の学校によりましては、通常の学級における在籍学級を既に定めまして、児童、生徒ひとりひとりの実態に応じて取り組んでいるところもございます。こういった取り組みを特別支援学級設置校長会などで紹介して、特別支援学級と通常の学級の交流を一層進められていくようにしてまいります。
 次に、特別支援学級を設置する際の配慮ということでございますが、児童、生徒、教職員などの人の流れや安全確保、障害特性などを考慮して、通常の学級と特別支援学級が日常的に触れ合うことができる場所に教室を配置することが望ましいというふうには考えておりますけれども、すべての要件を満たすことはなかなか難しい状況であるというふうにとらえております。)

◎陣内:特別支援教育についてです。
 特別支援教育について、交流についての取り組み、御答弁をいただきました。そしてまた、教室等の配置については幾つかの考慮する点がある。また、なかなか全部がそのようになっていないとのお答えではありますが、ぜひ前向きに、どうやったらより学校全体の問題としてこの支援教育を考えられるのか、そのような方向で見ていっていただきたいと思うわけです。
 そして、通常学級と特別支援学級の教師の交流ですね。また、教師同士のバリアを解消する。情報交換する。これは学校全体で取り組んでいく上で大変重要でありますので、ぜひ前向きにお願いいたします。
 そしてまた、交流の共有化に関しては、今御答弁の中で特別支援学級を設置している担当者の会議であったり、特別支援学級を設置している学校の校長会であったりという御説明がありました。これは、つまり、そういう学級がないところにはこのような特別支援の具体例、または、取り組みなどがなかなか共有されない。そのことをみずから認めてしまっているのではないかと思うんですね。まさにこれは今特別支援学級がある学校、そこでの改善がまず第一ではありますが、そうでない学校においてもさまざまな支援を必要とする子どもたちがおり、その支援に対しての試行錯誤が常に行われているわけですので、学校全体への共有化を進めていっていただきたいと思います。
 最後に、教育長にお尋ねいたします。今までも特別支援教育については多くの質問、議論が議会の中でも行われてきました。特別支援教育とは何かという問いに対して、特別支援教育とは、ノーマライゼーションの理念に基づき、ひとりひとりの教育ニーズに沿って進めていくもの、このように教育長は発言されています。その真意はよくわかりません。多分、特別扱いをしないで、ひとりひとりのニーズにこたえていくということかと思うんです。ノーマライゼーションを辞書で引いてみると、一般的とか、普通とか、そういった意味が出てきます。大変難しい課題です。つまり、特別扱いしないで、なおかつひとりひとりに必要なニーズにこたえていく。そういうことをやろうとしているわけです。でも、やっていかなければならない課題です。その実現の方向性というのは、学校全体で取り組むこと、そのことにあると思います。教育長自身も、このことは認識されているわけで、前に紹介しましたが、そのようにも認識されています。しかし、今さまざま御答弁いただいた中でも、全体の方向が見えていないのが現状です。
 そこで、どうしたら特別支援教育が学校全体の取り組み課題になるのか。共生社会形成の基礎となる特別支援教育とはどんな教育の姿をイメージされているのか。また、そのために最も重要な教育に求められているものとは何かお答えいただきたいと思います。私は、せめて卒業アルバムをクラスの仲間と一緒に撮れることを目指してもらいたい。そして、そのアルバムの笑顔が本物となるような環境づくりをつくっていってもらいたいと思っている次第です。

◎【石川和昭教育長】 特別支援教育を進める際に求められているものは何かとのお尋ねでございます。
 この点につきましては、障害の有無にかかわらず、地域の人々や保護者とともに、児童、生徒ひとりひとりについての理解を深め、教育的ニーズに応じた指導や支援を進めることが必要であると考えております。こうした姿勢を学校全体として受けとめ、教員ひとりひとりが身につけていけるよう引き続き研修の充実を図ってまいりたいと思います。
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